東京大学 大気海洋研究所 国際連携研究センター 教授 原田尚美先生

東京大学 大気海洋研究所
国際・地域連携研究センター
教授 原田尚美先生

 
LECOジャパン
「本日はお忙しい中お時間いただきましてありがとうございます。まず、現在のご研究テーマに
ついて教えていただけますか。」


原田先生
「はい。私の研究は、広大な南大洋を対象にしています。この海域は、生物が光合成を通じて炭素を吸収する「生物ポンプ」がよく働いており、その炭素吸収能力を定量的に評価することが主な目標です。南大洋は生物資源が豊富な海で、その背景には植物プランクトンによる有機物の高い生産性があります。私は、南太平洋の炭素吸収能を理解するための観測実験を行い、その中で、どういう生き物がその生産を担っているかを理解するために、特に生物が生成する有機化合物、いわゆるバイオマーカーをLECO社のGCxGC-TOFMSを使って分析しています。」


LECOジャパン
「ありがとうございます。そのご研究において、最も重要なポイントは何でしょうか。」

     


原田先生
「分析装置の性能ですね。特に重要なのは、微量サンプルでも分析できること、そして化合物を高い分離性能で検出できることがカギになってくるかと思います。従来の一次元ガスクロマトグラフィーでは分離しきれないような、あるいは定量しきれないような領域に迫ることができたらなと思っております。」


LECOジャパン
「今回の装置性能評価では、その分離性能、感度などが決め手となったのでしょうか。」


原田先生
「はい。これまでバイオマーカーというと、特定の単一有機化合物を指標として扱うのが一般的でした。しかし、実際の試料では完全に単一成分だけを取り出すことは難しいのです。そこで、今後は複数の化合物をまとめた植物プランクトン種ごとの「バイオマーカー群」として捉える必要があると考えています。この装置は複数ピークをしっかり検出できるので、そのような新しい解析アプローチに適していると感じました。」


LECOジャパン
「なるほど、従来とは異なる新しい視点ですね。」


原田先生
「そうですね。まだ広く普及しているとは言えず、これから開拓していく段階だと思います。
私たちのグループが先陣を切って、新しい研究領域を切り拓いていくことになるかもしれません。」

  東京大学 大気海洋研究所 国際連携研究センター 教授 原田尚美先生

Pegasus BT 4D  
LECOジャパン
「今後の展望として、さらにLECOの装置にどのような可能性を感じていらっしゃいますか。」


原田先生
「実は、こうした分析手法は他分野ではすでに一般的に使われている場合もあります。そうした異分野の知見を取り入れ、この装置をきっかけに分野間の結びつきができれば、新しい共同研究や発展につながると期待しています。むしろ、企業側から「このような使い方がある」という提案をいただけると非常にありがたいですね。」


LECOジャパン
「承知しました。LECOはグローバル・カンパニーですので、世界的な最先端情報などは、積極的にご提供いたします。」



原田先生
「ありがとうございます。正直、まだ試行錯誤の段階で、挑戦的な部分も多いのですが、
それだけこの装置に期待を寄せているということでもあります。
今後どのような使い方ができるのか探りながら、研究を発展させていきたいと考えています。」

  東京大学 大気海洋研究所 国際連携研究センター 教授 原田尚美先生
 


LECOジャパン
「有機地球化学の分野についてですが、これまでは石油系の研究を中心に発展してきた印象があります。この点についてはどのようにお考えですか。」


原田先生
「そうですね。これまで扱われてきた有機化合物は、ある程度「分かっている気になっている」とされてきたものが多いのですが、実際にはまだ十分に理解されていない部分も多いと思っています。むしろ、これまで分かっていると思われていたことを覆すような、新しい知見が得られる可能性に期待しています。」

東京大学 大気海洋研究所 国際連携研究センター 教授 原田尚美先生  


LECOジャパン
「実際に、原田先生のご研究テーマとは異なりますが、有機地球科学分野の他の先生からのご依頼からも、新しい知見が得られております。」


原田先生
「はい。例えば他の先生方の研究では、これまでにない知見が得られている一方で、その解釈が非常に難しいという課題もあると聞いています。ただ、そうした「手がかり」が得られていること自体が大きな前進で、今後さらに研究が広がっていく可能性を感じています。」


LECOジャパン
「今後の展開として、学会などとの関わりも重要になりそうですね。」


原田先生
「そうですね。ただ、私はこれまで有機地球化学系の学会にはあまり参加してこなかったのです。学生時代に一度参加した程度で、主には海洋学会や日本地球化学会に参加してきました。有機化合物を扱う研究者も、最近はより大きな枠組みで研究発表を行う傾向が強くなっていると思います。」


LECOジャパン
「どの学会にもトレンドの変化が起きているということですね。」


原田先生
「はい。個々の化合物に注目するというよりも、もう少し広い視点で海洋現象を捉える研究が増えています。その結果、有機化学的なアプローチは海洋分野から減少した印象があります。」


LECOジャパン
「一方で、分析科学や質量分析の分野、さらには宇宙科学分野では有機化合物研究も活発だとお聞きしております。」

  東京大学 大気海洋研究所 国際連携研究センター 教授 原田尚美先生
原田先生
「そうなのです。今、有機化合物の研究は宇宙分野で非常に盛んで、探査ミッションなどでも重要な役割を果たしています。海洋分野では
やや数が少なくなっているのが現状ですね。」

LECOジャパン
「そのような状況の中で、先生のご研究は貴重な位置づけになりそうですね。」

原田先生
「そうですね。海洋分野での有機化合物研究はまだ限られていますが、その分、新しい発見が生まれる余地も大きいと感じています。」

LECOジャパン
「弊社としても、そのような先駆的な研究をぜひ支援させていただきたいと考えています。将来的には海外の研究者との連携や交流の場も
設けられればと思っています。」

原田先生
「それはとてもありがたいです。ぜひ実現できれば嬉しいですね。」

LECOジャパン
「はい。今後も全力でサポートさせていただきますので、引き続きよろしくお願いいたします。」

原田先生
「こちらこそ、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。」

LECOジャパン
「ありがとうございました。これでインタビューを終了させていただきます。
本日はお忙しい中、貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。
今後の益々のご活躍を期待しております。」



【分析側の立場から】

貴重なお話をありがとうございました。私も分析者の端くれとして、 壮大かつ地球環境や将来の世代にとって非常に重要なご研究に装置メーカーという立場から関われることを心から嬉しく光栄に思います。装置性能が最大限に活かせるようサポートして参りますので、今後ともよろしくお願いいたします。原田先生の益々のご活躍をお祈り申し上げます。

【今回のインタビューを振り返って】

まず、ご多忙を極めていらっしゃる中、お時間を割いていただいたことに改めて感謝申し上げます。このインタビューを通じて、原田先生の、常に未知の世界を切り拓かれていく探究者のスタンスを敬服するとともに、装置メーカーとしての責務も感じました。先生との出会いを大切に、これからも社を上げてサポートいたしますので、今後ともよろしくお願いいたします。

     

原田尚美研究室(東京大学大気海洋研究所)
南極