食品中のたんぱく質分析 燃焼法の最適化
– 低濃度窒素試料中のたんぱく質測定

食品中のたんぱく質分析 燃焼法の最適化 – 低濃度窒素試料中のたんぱく質測定


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食品試料の全たんぱく質量を測定するためには通常、まず試料の窒素量を測定し、その試料特有の係数を用いてたんぱく質量を計算する方法をとります。窒素量の測定には従来法の湿式分析法、または近年普及してきた燃焼法をベースとしたデュマ法を用いることができます。

「機器分析法は初期費用がかかるものの、ラボの生産性とスループットは飛躍的に向上します。」LECOコーポレーション有機分析装置プロダクトマネージャーのMason Marshは続けます。「湿式法で数時間かかるところ、燃焼法では数分で結果を得ることができます。さらにオペレーションの簡便さ、全体的な安全性など高い満足度だけでなくオペレータの健康と安全も向上します。」

 

燃焼法による窒素分析装置では酸素気流中、高温燃焼炉で試料の燃焼を行います。炉から運ばれた燃焼ガスは、検出器による定量時に妨害となるダストや水分を含むいくつかの夾雑物を除去し、NOxの形態からN2に還元されて熱伝導度検出器(TC)で検出されます。

 

燃焼法装置の制約として装置が持つ試料重量上限以上の試料を測定できないという点があります。これは大部分の食品試料では問題にならないことが多く、0.5 g以下という試料重量でも十分です。ただしコーンスターチ、NDIN(中性デタ―ジェント不溶性窒素)、フィルターバッグ、低濃度ろ液、ビール、低濃度ろ材など含有窒素量が少ない試料を取り扱う際にはこの試料重量の制約が分析の課題となる場合があります。

 

こうした低濃度窒素試料を燃焼法で適切に分析するにはどのようにしたらよいのでしょうか?
Marshによると、 「ひとつは試料重量を増やし、検出器で測定する窒素量を増やすことです。さらにこの方法は偏析を持つ試料の測定値のばらつき改善にも大きく貢献できるのです。」 試料量の増加は測定値の精度改善にどのように影響を与えるのでしょうか。

 

スターチ、ビール、栄養ドリンクなどを含む低窒素試料の測定を窒素/たんぱく質分析装置 FP828、FP928(LECO Corporation, St. Joseph, MI)を用いて行いました。二つの装置はどちらも窒素分析装置ですがFP828の試料重量は1.0gまで、一方FP928は1.0 g以上 (試料によっては2 g、3 gまで)の試料を分析できるようデザインされています。どちらの装置も同様の測定原理に基づいていますが炉の構造が異なり、FP928ではより多くの試料を燃焼することが可能です。装置の持つ特性を活かした装置選びを行うことにより幅広い試料の測定に対応することができます。

 

それぞれの装置の測定手順を見てみましょう。

FP828

  • 1.0 g以下の試料をスズホイル、カプセル等の試料容器にはかり取り、装置に投入します。
      試料は密閉されたパージチャンバー内に移動し、巻き込みにより入った大気が酸素ガスで置換されます。
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  • 試料は炉の中に落下し、純酸素気流中で完全燃焼します。
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  • 燃焼ガスは炉を出て水分が除去され、バラストと呼ばれるタンクに貯められます。
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  • ガスはタンク内で平衡化したのち一定量を分取し、測定用キャリアガスの不活性ガス中に導入されます。
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  • 加熱された還元管は銅が詰められており、NOxをN2ガスに変換し余剰の酸素を除去する役割を持っています。
      二酸化炭素(CO2)はLECOSORB®、水をAnhydrone®で除去します。
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  • 熱伝導度検出器(TCセル)によって窒素を検出します。

FP928

試料の測定方法はFP828とほぼ同じですが、炉のデザインと試料の投入方法が異なります。本装置では1.0-2.0 gの試料を測定することが可能で、試料はボートと呼ばれる容器にはかり取ります。大気のパージと多量試料の燃焼に優れたヨコ型の炉に試料ボートを押し入れる形で導入されます。ボートに採取された試料は、容器に封入されておらず、オープンな状態で炉がパージされるため、試料とともに大気が容器に閉じ込められ、その大気が測定結果に影響を及ぼすことがありません。これは特に低濃度試料を測定する際には有利になる点と言えます。

【分析結果】

下に示す結果は異なる試料量で低窒素濃度の粉状、液体試料を測定した時の標準偏差を示したものです。それぞれの窒素濃度測定値は試料名の下に表記されています。

標準偏差(wt %)


試料
FP928
試料ボート
FP828
502-825
スズカプセル大
FP828
502-040
スズカプセル中
試料量 ~1.0 g 0.50 g 0.30 g
浸透液
(平均 N:0.0336 %)
0.0002 0.0024 0.0006
オレンジジュース
(平均 N:0.1314 %)
0.0002 0.0019 0.0061
スペシャルティビール
(平均 N:0.0750 %)
0.0001 0.0007 0.0025
市販ビール
(平均 N:0.0408 %)
0.0004 0.0014 0.0016

標準偏差(wt %)


試料
FP928
試料ボート
FP828
502-382
ジェルキャップ
FP828
502-338
ジェルキャップ
FP828
502-186
スズホイル
試料量 ~1.0 g 0.40 g 0.30 g 0.25 g
ワキシ―コーンスターチ
(平均 N:0.0222 %)
0.0002 0.0006 0.0009 0.0016
ラクトースA
(平均 N:0.0051 %)
0.0027 0.0007 0.0017 0.0019
ラクトースB
(平均 N:0.0295 %)
0.0002 0.0008 0.0017 0.0008

「以上の結果より全体的に試料量が多い方が精度が良く、FP928での結果が最も良いことがわかります。」LECO Corporation アナリティカルケミストのFred Schultzは言います。試料量を多くとってもばらつきがみられる試料は試料固有の偏析によるものです。FP828装置でスズホイルによって測定された結果については大気ブランクの影響が原因と思われます。これは試料をホイル等に包む際一定量の大気が試料とともに中に保持され、大気中の窒素が窒素分として検出されることにより低窒素濃度の測定値にばらつきをもたらすことで起こります。FP828での測定では予め大気ブランクの値を求めておき、結果から差し引くことが必要になります。FP928では試料ボートがオープンのまま装置に投入されるため大気ブランクの差し引きは必要ありません。「液体試料は試料量が多くとれるため、全ての試料でFP928での結果の方が良好でした。」

*詳細な分析条件、測定手順、分析結果をご覧になりたい場合はLECOジャパンまでお問い合わせください。→お問い合わせ

【結論】

燃焼法装置を用いて低窒素濃度試料を分析するのは装置によっては難しい場合がありますが、試料重量を増やすなど条件の最適化を行うことにより可能になることが示されました。液体、または粉状の低窒素濃度試料について試料重量を増やすと精度が向上しました。FP828についてはFP928よりも試料量の制約があるため試料に偏析がある場合に受ける影響と、試料容器形状による大気ブランクの補正について考慮する必要があります。

「FP928を選択することでより正確な結果を得ることができ、大気ブランク補正等の項目についての手間と不確かさを考慮することもありません。そしてオペレータの測定手順はよりシンプルになります。」Marshは言います。FP828,FP928が貴所のたんぱく質分析をいかに転換できるか、ぜひご覧ください。

【大気ブランク測定手順】
1)試薬グレード、微粉末状のスクロースを実試料と同等程度の重量で数回分析します。試料重量にははかり取ったスクロースの重量を入力します。
2)この窒素値が大気ブランクとなります。FP828ソフトウェアの「大気ブランク」の欄にこの値を入力しておくことで、自動的に測定値から大気ブランクを差し引きます。
 *スクロースには窒素が含まれていないため、試料をスズホイルで包んだ時に巻き込みで封入される大気由来の窒素分を測定することができます。