Petr Vozka助教授インタビュー(2023年11月収録)

Petr Vozka

カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校 助教授
複雑化学組成分析研究所 (C3AL) という名前のVozka 助教授の研究室では、複雑な混合物のノンターゲット分析を中心としており、その分野は燃料をはじめ、プラスチック廃棄物の解重合からの生成物 、マイクロプラスチックなど多岐にわたっています。
本インタビューでは、Vozka助教授の最新のご研究科から今後の展望まで、大変興味深いお話をいただきました。

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※開始から20秒までBGMの音量が大きいのでご注意ください。


<<内容詳細>>

Andrew Story:

こんにちは。Measured Science の新たなエピソードへようこそ。
ホストの Andrew Storey です。本日のポッドキャストの共同ホストは、Dave Russ さんです。米国 LECO 社質量分析部門のセールスマネージャをされています。
そしてゲストには、Petr Vozka 化学助教授をお迎えしています。氏は、カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校で複合化学組成分析ラボを率いています。
Vozka 助教授は Purdue 大学で博士課程を終了し、その後同大学でポスドク研究も行いました。
Purdue 大学で LECO 社の質量分析装置と初めて出会い、2020 年からはカリフォルニア州立大学ロサンゼルス校の教員として研究を進めています。
氏の研究は広範に渡る複雑な混合物のノンターゲット分析を中心としており、燃料、廃棄物解重合からの生成物、フィンガープリント、および流出油などの研究を手がけてきました。
Vozka 助教授は今年の LCGC で質量分析の期待の星として取り上げられました。LECO 社では新しいラボを立ち上げてカリフォルニア州立大学ロサンゼルス校と提携し、LECO 社の各種装置も提供しています。
Dave さん、Petr さん、ポッドキャストへようこそ。

Dave Russ:

よろしくお願いします。

Petr Vozka:

こんにちは Andrew さん、Dave さん。
お招きいただきありがとうございます。
呼んでいいただいて本当に光栄です。

Andrew Story:

いろいろとお話を聞けるのをすごく楽しみにしています。LECO 社との提携やラボでの研究でたくさんの取り組みが進行中だと思いますので、今日はそのあたりを少し伺えればと思います。助

Petr Vozka:

わかりました。
そうですね…私がカリフォルニア州立大学ロサンゼルス校に移った時、最初に使えたのは単一四重極の GCMS FID だけでした。これは私が授業に必要なものとして学科に自前で持ってきたものです。ここには分類すべきマススペクトルがたくさんあるのに、装置は大したものがなかったんです。
立ち上げに伴っていわば教育協定を結んでいたので、LECO 社の GCGC FID を購入しました。今でいう Quad Jet というやつです。
最初はこんな感じで始まりました。お分かりのように、より良い高分解能などの定性能力が足りない、あるいは持ち合わせていない状態でした。
物事が動き始めたのは、Pegasus BT のプレゼントプログラムに当選した時だったと思います。その時初めて Farai (米国 LECO 社質量分析部門ダイレクター)さんにお会いしました。その後すぐに Dave さんや LECO 社の他の方たちともお会いし、今回の提携を始めることになりました。これについてはまた後ほど触れると思います。また、今回の LECO 社との提携のおかげで、Pegasus BT4D や、GCGC TOFMS を手に入れることができました。これにはパイロライザー (熱分解ユニット) も付いていて、素晴らしい装置です。数週間前に装置が到着しまして、皆で使い方を学習しているところです。
ラボの装備はいまこんな感じです。
私たちは、ここで満足しないようにしたいと思っています。
とはいえ、すべてとは言わないまでも、ラボなら欲しいと思うほとんどの装置を揃えることができましたから、今度はわたしたちが役割を果たす番だと思います。エキサイティングな結果を示す必要が本当にあって、社会に役立つ方法でこれらの装置を活用する責任があります。

Andrew Story:

こうした装置は研究の大目的にどのように貢献していますか。研究を通して成し遂げたいと願ってきたことがきっとあると思います。
そこに向かって進むための推進力として、これらの装置はどう役立っているんでしょうか。

Petr Vozka:

現在取り組み中のプロジェクトが複数あります。
メインとなるプロジェクトは、熱分解および水熱処理などの手法によるプラスチック廃棄物の解重合生成物の分析です。
これは素晴らしいプロジェクトで、化学工学の観点から多くの大学が取り組んでいるものです。これにより、Purdue 大学、プラハ化学技術大学、またオランダのデルフト工科大学との共同研究が可能になっています。
これらの大学が我々にサンプルを送ってきます。
我々はサンプルを分析し、先方にフィードバックを返します。
よい連携ができていると思います。
それで、解重合のための最適な分析条件を見つけるべく励んでいます。プラスチック廃棄物はものすごい勢いで増えていて、皆がどうすれば良いかが分からなくなっています。
我々は、解重合が 1 つの有用な方法になるのではないかと考えています。
ほとんどの場合これらの混合物は…ほとんどではないかもしれませんが、燃料で、非常に複雑な化学混合物です。
一部は燃料として使用することができ、一部は別の化学物質として使用できます。
ここで、GCGC の存在がとりわけ重要になってきます。質量分析の部分に限られますが、解重合経路を解明して、最適な分析条件を見つけようとするのであれば、これらすべての化合物をきちんと確認する必要があります。
これは、GCGC なしでは不可能なことの 1 つです。
しばらくの間 GCGC FID を使用してこれを実行しようとしていますが、これは取得しようとする生成物のほとんどが炭化水素の場合にのみ有効です。
ご質問の件ですが、御社の装置が我々の大目標達成にどう役立っているか、ということでしたよね?
我々がこれらの燃料で学んだことですが、これらがポリマーであるため、一度解重合を行うと、必ず二重結合化合物であるアルケンが生成されます。
これらの燃料には大量のアルケンが存在しますが、世間的にはまだ馴染みがありません。
なぜなら、私たちが原油系燃料や石油系燃料を使用する場合、そこに含まれるオレフィンは数 PPM、つまりわずかな重量パーセントしかないからです。オレフィンが非常に不安定な性質であることが理由です。
しかし、解重合を行うと、これが最大で 50 重量パーセントに達します。つまり、燃料混合物中のこれらの化合物の半分がアルケンということになります。
それで、シクロアルカンと 1 つか 2 つの二重結合を持つアルケンを区別しようとする際に問題がある場合、この研究分野における分析化学の部分では、巨大とは言わないまでも、いまだにある程度のリサーチギャップが存在しているように思います。
それで、我々はメソッドを開発しているわけです。
近々発表できると思います。
これが、ここ 1 ~ 2 年で我々が最優先で取り組んでいる主なゴールの 1 つです。
その後は、芳香族アルケンに移る予定です。このメソッドは非芳香族で使用することができるためで、…えっと、そうですね…お時間がまだあれば、ほかのにもたくさんプロジェクトがあるのでいくらでも話せますが。

Andrew Story:

ええ、そうですね、かなり重要なことだと思います。
本当に、これは分析化学やエネルギー開発の核となる部分だと思います。将来のためにも、世界のエネルギー供給の多様な手段を開発することはとても重要ですよね。

Dave Russ:

その通りとおりですね。
Petr さん、伺ったお話の中で素晴らしいなと思ったものの 1 つが受け持ちの学生さんたちとの交流なんですが、これがラボにとっていかに大切かということが分かりました。
学生さんたちのことについて少し聞かせていただけますか?彼らは自分たちが手がけている研究でどのように装置を活用しているんでしょうか?

Petr Vozka:

わかりました。そうですね、カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校では、ほとんどが、とは言いませんが多くの学部生がいて、そして修士学生もいます。
学部生を受け持ったら、普通は彼らを卒業させて、より良い学校に進学させますよね?
R1 の教育機関に行かせるわけです。
でも時に、さまざまな理由でここを去りたくないと考える学生たちがいます。
そうなると、彼らを修士学生として抱えることになるわけです。
こうした学生たちを受け持つ期間を延長させることができます。
運が良ければ、というか資金的に余裕があればポスドクも抱えることができます。ところで、私もポスドクを一人探しています。今これを聞いているポスドクで GCGC の経験をお持ちの方、資金援助のあるポジションですので、ぜひ私までご連絡ください。勝手に宣伝を始めてすみません…本当にポスドクが必要なんです、優秀なポスドクが…。
我々の学生のほとんどが大学第 1 世代です。ここが大事なところでして…。
ちなみに私自身も大学第 1 世代の学生でした。
ここがカリフォルニアということもあって、彼らは実にさまざまな背景を持っています。
彼らの内、全員とは言いませんが、多くが非常に所得の低い家庭で育っています。
そんなわけで、カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校は Upward Mobility (経済的地位の向上を目指す気風) が最も強い学校として知られています。
正直なところ、この学校の面接に呼ばれた時には、何のことかさっぱりわかりませんでした。
Google で Upward Mobility とは何かを検索したくらいです。
馴染みのない方のために言い換えると、我々はある意味で底辺の、低所得層の学生とその家庭を受け入れて、経済的に向上した家庭へと変化させているということです。
それで学生たちは、自分たちが教育を受ければ、数年のあいだ勉学に励めば、自分の人生だけでなく家族全体の生活まで一変させることができるということを理解しています。家族の結びつきが非常に強いんです。
そういったわけで、時折、というよりほとんどの場合、学生たちは別の場所に行くことを望みません。
ここを去って、家族から遠く離れることを嫌がります。
それから、多くの学生たちは、研究者とは何なのかということの概念が理解できていません。
理由は、皆さんにもお分かりいただけると思います。
自分が大学第 1 世代の学生だとしたら、研究の概念なんてよくわかりませんよね?
それで我々は、こうした聡明な学生たちをできるだけ早く、言わば捕まえて、研究とは何かということを伝える必要があります。そうすれば、自分たちが何をすれば良いかが分かってきます。
TV で見るサイエンスフィクションのような世界ではない、ということが分かってきます。
こうした事柄すべてにおける良い面としては、…ここまでの話には悲しい側面もありましたが、一旦努力を始めると、彼らは飛躍的に成長します。非常に勤勉なんです。
何事も当たり前と思い込むことはしません。そして最も素晴らしいのは、先ほども言いましたが、彼らがとても早くいなくなってしまうことです。2 年目の学生がいるとすると、あと 2 年か、2 年半くらいで卒業してしまうわけです。修士学生として戻ってくる場合もありますし、いなくなる場合もあります。時間が限られているので、こうした学生たちをできるだけ早期に獲得することに注力しています。
今わたしの元にも新入生たちがいますが、皆さんと同様、素晴らしい子たちです。
本当に一生懸命ですし、非常に熱心です。
それから、学生たちが装置をどんなふうに活用しているかということでしたね。
そうですね…2 年生や 3 年生を指導すると、幾人かの学生は自分たちが仕事ができるということに驚くことがあります。
「いじる」という表現が良いか分かりませんが、でも時には本当に装置を「いじる」ことも必要なんです。
でも本当に、彼らは何でもやっています。
これもまた悲しい話なんですが、これまでに 2 回ラボの引っ越しをしました。
いまやっと落ち着いてきたところですが、良かったのは、装置を移動するためにすべての接続を外して、その後もう一度接続しなおさなければいけなかったことです。実際、学生たちはよくやってくれました。大いに助けられました。
こんなふうに、私の元には LECO の技術者並みに素晴らしい、優秀な学生たちがいます。
学生たちは今現在トラブルシュートに取り組んでいます。問題があって、スプリットバルブのケーブルが破損したんですが、彼らがこの問題を発見しました。
また、装置の設置ですが、一般的な据付とは異なるやり方をしています。
装置は壁に向かって設置しているんですが、そうすると装置の後側に回って、たくさんの接続を全部確認することができるんです。たくさんのケーブルがあちら側のテーブルからこちら側へといった感じで、トラブルシュートにも全体の接続を把握して対応できますし、インレットライナーなどの交換作業にも役立ちます。全員ではありませんが、ほとんどの学生たちはこうした作業ができるようになっています。私も彼らに喜んで教えますし、学生同士でも教え合っています。
それで学生たちは、ただボタンを押すだけではなくて、装置のトラブルシュートやメンテナンスにも対応できるんです。

Dave Russ:

ところで Petr さん、ラボには何人の学生がいるんですか?

Petr Vozka:

それはいい質問ですね。
よく尋ねられるんですが、その度に「今学期は何人だったかな…」という感じになるんです。みんな卒業していきますからね。
今学期はたくさん学生がいるんですが、実は残念なことに来学期にはほとんどが卒業していきます。
今のところ、修士学生が 6 名、そして学部生が 7 名います。

Andrew Story:

ということは、次に入れる学部生も探しているところですね?

Petr Vozka:

仰るとおりです。

Andrew Story:

いいですね。
学部生にとっては素晴らしい経験だと思います。特に、装置に関する経験を多く積めるのは大きいですよね。
私も Worcester 大学の学部生だったときに同じ経験をしました。
思うんですが、単に日常的に装置を使う方法を学習するだけでなく、適切な状態を保つためのメンテナンス方法を学ぶことは、こうした装置を実際にどんなふうに操作するのかを知っておくことは、大学を出てからは必要不可欠なことですよね。
ですから…

Petr Vozka:

わたしが実際に…遮ってすみません、私が学部生だったころは、そういったものがチェコ共和国にありませんでした。
化学の世界では最高の大学でしたが、実践的な経験の機会が不足している状態でした。
自分でも残念に思いますが、自ら装置に触ることができた唯一の機会は、学部の卒業論文を書いていた時だったんです。
それが最終学期でした。その前には、皆さんがやるようにラボ研究をしたこともありましたが、それでも装置を日常的に触れるような環境ではありませんでした。PI がいないにも関わらずです。
世界はより早い速度で向上し成長を続けているわけですから、高校レベルでも、GCGC は無理だとしても何らかの手法に触れられるようにする必要があると思います。
そうすれば間違いなく知見が向上し、この分野に対する情熱を高めることもできると思っています。

Andrew Story:

助教授のラボで次に目指しているのはどんなことでしょう?
必要な装置も全部揃っていて、学生たちが素晴らしい研究を進めていますよね。
今後目指そうとしている最先端の研究としては、どんなものが視野に入っていますか?

Petr Vozka:

短期的なところでは、燃料中の脂肪族オレフィンのための定量分析メソッドを完成させる必要があります。
これらの結果は既にいくつかの学会で発表しています。
このメソッドは検証することができたので、最後の仕上げに GCGC TOFMS からの結果を待っているところです。
結果が分かり次第これを論文に盛り込んで、最終的にはジャーナルに提出します。
その間に、芳香族オレフィンへの取り組みも始めています。非芳香族オレフィンと芳香族オレフィンの両方に関するメソッドが文献に存在しないと考えられるためです。
ASTM で認可された分析メソッドはあるのですが、あまり洗練されたものではなく詳細も不十分なので、石油工学の分野ではそうしたメソッドが必要なのです。
今は、マイクロプラスチックに吸着した化合物や有機化合物に関する知識を広げている段階です。
もしかしたらご存知かもしれませんが、カリフォルニアでは 2022 年に米国初の包括的マイクロプラスチック戦略を承認しています。
この戦略では、マイクロプラスチックに吸着する化合物について、またはマイクロプラスチックがどんな化合物を吸着するのか、といったことには触れていませんが、我々としては一歩進んだと考えています。
それで我々としてはこの戦略をよく理解し、どんな種類の化合物がどんな種類のマイクロプラスチックに吸着されるのか、そして、これらの化合物が環境にどのように作用するのか、それが人間の体内か LA の河川かに関わりなく見ていきたいと思っています。
また、化学組成および潜在指紋、ヒト指紋を対象にしたプロジェクトが既にスタートしています。我々のキャンパスにはカリフォルニア法医学研究所がありますが、これは法医学を学ぶ学生たちにとって素晴らしいことです。実サンプル、実際の法医学事例を使って研究ができるんです。
本当にすごいことです。
それから、GCGC FID 用の LECO ChromaTOF Tile ソフトウェアのベータテストも開始しています。つい先日、別の LECO ソフトウェアの NDA にもサインしたところです。
短期的にはこんなところです。学生たちは世界中で使われるソフトウェアのテストに自分が関われることに本当に驚いていて、とてもうれしそうです。
私としては何人かの学生たちを卒業させなければなりません。これはいいニュースですが、彼らの多くが来学期には卒業します。
それから長期的な取り組みですが、新しいアプリケーションや様々な研究分野に新たな GCGC による質量分析の導入を常に促進しています。この手法は、これまで GCGC に馴染みのない人々にとっても、多くのものを提供できるからです。
それで、いくつかのワークショップを計画しています。
そのうちの 1 つは我々カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校の学生向けのものです。
5 日間のブートキャンプスタイルのワークショップで、午前と午後のセッションで学生たちが GCGC という手法について学びます。
CSU 海洋科学技術評議会の教員向けにもワークショップを開催します。こちらは 2 日間のワークショップですが、2 日連続で開催するのではなく日にちを空けて開催し、教員の皆さんが我々にサンプルを提出できるようにします。
受け取ったものを分析し、GCGC によってどのように研究が前進し、向上するかをお見せする予定です。
そして最も重要な計画として私も楽しみにしているのですが、Multi-dimensional Chromatography Workshop を来年 1 月(2024年1月)に西海岸で開催します。

Andrew Story:

それは素晴らしいですね。
そして実にいいタイミングで大事なことに触れていただきました。今年 2024 年に、その多次元クロマトグラフィーフォーラムを助教授たちが開催されるんですよね。
内容や計画について少し教えていただけますか?

Petr Vozka:

はい、もちろんです。MDCW (Multi-dimensional Chromatography Workshop) について共有できたらうれしいです。
昨年は基調講演者として招待していただいたんですが、今年は委員会メンバーになりました。
とはいえ、注目や称賛を受けるべきはPerrault 博士、Stefanuto 博士、そして Stoll 博士のお三方だと思います
数年に渡りこのカンファレンスを開催してきたのはこの方たちです。
GCGC と LCLC コミュニティが一堂に会する素晴らしいイベントです。
今年このカンファレンスの一端を担わせていただいて、恐縮するとともにすごく光栄に思っています。1 月の開催が待ち遠しいです。
ご存じない方たちのためにお知らせしますが、1 月 10 日から 12 日にかけて開催されます。恐らくたくさんの広告を目にされていると思います。
もしまだでしたら、LinkedIn で検索すると出てくると思います。
そこで何が起こるかについてもお知らせしますね。
たくさんの研究者たちが参加します。
すばらしいアブストラクトをたくさん拝見しました。
比較的小さなカンファレンスですので、参加者の皆さんと実際に会って、誰とでも直接話すことができます。
3 日間のイベントですので、時間はたっぷりあります。いくつかのアイディアをブレインストーミングしたり、とにかく発表をたくさん聞いたりして楽しんでいただけると思います。
委員会では毎年、新しいアイディアを実行しようとしています。
今年は、キッチンカーを何台か持って行けたらと考えています。
LECO 社ではワインの試飲イベントを主催してくださいます。
これは科学的な手法のワイン試飲会だそうです。
LECO 社がこうしたイベントを主催するときはいつでも大成功です。
ポスターセッションやディスカッショングループ、フラッシュトーク、ロングトーク、レギュラートークもあります。
今年は Labrulez とも提携します。
詳細はすべてそちらのウェブサイトに掲載されています。
昨年からの情報もすべて掲載されていますので、どんな感じなのか覗いてみたいという方は、ウェブサイトで関連動画をご覧ください。
ざっくりまとめると、GCGC および LCLC の研究の世界から、たくさんの刺激的な研究が集まります。
私は燃料の話ばかりしていますが、こうした燃料に関する研究は、通常こうしたイベントの中でごくわずかな部分しか占めていません。
ほかにもたくさんの研究分野があります。
ですので、来れる方は是非いらしてください。

Andrew Story:

いいですね。登録はまだ間に合いますか?

Petr Vozka:

全然大丈夫です。
先ほど言いそびれましたが、登録は無料です。皆さん無料はお好きだと思います。
それから、コーヒーくらいは出るのかということですが、もちろんあります。コーヒー、ワイン、水、ランチにディナー…何でもあります。お近くの方でしたら是非登録をお勧めします。もし近くなくても、通常こうした ACS カンファレンスに参加するときは登録が有料ですよね。
こうしたイベントに参加するときは、時間と費用がかかることを想像されると思います。
でもここは、登録無料です。

Andrew Story:

こうしたコミュニティカンファレンスは素晴らしいと思います。
知り合いを増やしたり、潜在的なコラボレーションを構築したりするのに凄くいい機会ですよね。大きなカンファレンスでは得てして失われがちなものです。
もちろん、大きなカンファレンスにも良さがあって大好きですけど。
それでも、こうしたワークショップでは、とにかく近い距離で関係を構築できますよね。
そこが特別だと思います。
ですので、すごく良いイベントになりそうですね。

Dave Russ:

本当にそうですね。
ところで Petr さん、ラボにお邪魔したときに拝見してすごいなと思ったことの 1 つなんですが、というか 2 つで 1 つでして、
1 つは、学生たちが主体性をもってラボの研究に取り組んでいるということです。いわば腕まくりして、装置を活用していますね。
もう 1 つは彼らがラボで生み出すアイディアです。ちょっと先に言ってしまいますが、装置のサイド部分にステッカーが貼ってありますよね。
それから Lego ブロックで作った像がラボのあちこちに飾ってあって、それもなかなか素敵でした。
よかったらそのあたりをもう少し話していただけませんか?

Petr Vozka:

もちろん、喜んでお話しますよ。
つまりはこれが、ラボの非科学的な部分です。私は、学生たちがこうしたささやかな楽しみを本当に大切にしてくれていると信じているんですが、その理由をお話しますね。
彼らが言っていたことなんですが、私はいつでも、既存の学生や新しく入ってきた学生たちに、自分たちが歓迎されていることを感じて欲しいんです。
それで、多様性を称賛する意味でドアのところに世界地図を貼っています。国外から新たな学生たちがこのラボに加わる時にはいつでも、国旗のついたピンを地図に刺してもらいます。
学生たちはこのアイディアを本当に気に入ってくれて、「この人の話を聞こうよ、これはすごいよ」って言ってくれるんです。
それで、うちの学生たちが実際に応募したんです。
Chemistry and Engineering News Journal という雑誌の公募でした。
それで彼らは写真を送って、実際に 2 つの写真が先週号に掲載されました。
我々のラボが初めて C&EN 誌に載ったわけです。
これが 1 つですね。多様性を称賛するということです。もちろん、学生たちの成功を称賛したいと常に思っています。
これがもう 1 つ彼が言っていることです。
我々が使っている GC 分析装置や GCGC 分析装置のサイドパネルには、ジャーナルやカンファレンス、口頭プレゼンテーション、ポスターや論文のステッカーが貼ってあります。
学生たちは論文を発表するたびに、小さなステッカーをこれらのステッカーの隣に貼っていくんです。
それで、装置に貼ってあるステッカーの数が多いほど、その装置がより多くの研究に関わったということになります。
いわば装置どうしを互いに競争させているような感じです。
我々のインスタグラムをチェックしてもらえれば、こうした写真も全部見ていただけると思います。
それから、インスタグラムをチェックしてもらうと、時には我々が LECO の装置より Lego ブロックで遊んでいるように見えるかもしれません。
最初に始めたのは私だと思います。Lego はチェコ共和国で作られていて、私はその国の出身です。家庭があまり裕福ではなかったので、子供のころは Lego を買ってもらう余裕が家にありませんでした。
それで、今になって買い始めたんです。すごく好きなもので。
私にとっては、これがリラックス方法になっていて、ささやかな趣味とも呼べるものです。
そんなわけで、私は Lego を組み立てるんです。
それから、うちの妻がこういうものを家に置くのを嫌がるので、ほかの場所に置かなければいけない、というのもあります。
それで Lego をラボに持ってきたんですが、そうしたら学生たちも気に入ってしまったというわけです。
それで時々、装置を稼働させている間や排気中などに、皆で一緒に Lego を組み立てたりしています。
今でもこれを楽しんでいる学生たちがいると思います。C&EN 誌に載った 2 番目の写真には、GCMS FID の水素ジェネレーターの上に乗った Lego フラワーが映っています。
科学の話をしていないときは、こんなことを皆でやっています。

Andrew Story:

ご自身が科学の世界で成功を収めるために役立ったことなど、キャリアの浅い研究者たちに何かアドバイスはありますか?

Petr Vozka:

キャリアの浅い研究者にアドバイスできるほどではないんですが、自分の経験なら話せます。博士課程の学生およびポスドクだった頃は、カンファレンスやポスタープレゼンテーション、口頭プレゼンテーションをするよりも、我々の研究分野では論文を書くことの方がより強力で、重要度が高いと感じていました。
キャリアの浅い研究者の中には、大勢の聴衆を前にしてプレゼンをすることに気後れしてしまうということもあると思います。
私の場合、カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校の教員になったことですべてが変わりました。初めての大規模なカンファレンスに出席したんです。2022 年の秋にシカゴで開かれた ACS でした。
毎年秋に GCGC のセッションが開かれています。
それで出席して、受け持ちの学生が我々の研究についてプレゼンして、その後皆で一緒に夕食を食べに行ったんです。GCGC セッションの参加者のほとんどが一緒でした。そこから物事が動き始めたんです。
すごいことでした。
GCGC の世界はそれほど大きくないので、雰囲気はいつでも和やかな感じです。
とても温かいんです。
誰もが互いをサポートし合っていて、雰囲気がとてもよかったんです。
それからというもの、こうした GCGC や ACS の小さなカンファレンスには、GCGC セッションがある時にはほとんど出るようにしています。
そして思い出すのが、2022 年のシカゴで開かれた ACS で、Katelynn Perrault 博士にお会いする機会に恵まれたことです。
私のメンターとして、ヒントやアドバイスを与えてくださり、大賞やグランプリに応募するよう背中を押してくれました。
若い科学者たちにとって、こうしたサポートを得ることはとても重要だと思います。
最終的には自分ですべてを行なわなければいけません。
それでも、助けてくれる人や背中を押してくれる人、自分が手がけている研究について相談できる人がいてくれるなら、それは本当にありがたいことです。
Andrew さんも先ほどおっしゃったように、たくさんのコラボレーションやアイディアは、まさにそうした環境から生み出されるんです。ほかの人の話を聞きながら、「たぶんこれとこれを組み合わせればうまくいくかもしれない」みたいなことがわかったりするわけです。
それで、もしアドバイスを送るとするなら、来年、2024 年 1 月に開かれる Multi-dimensional Chromatography Workshop に来てください。そこがあなたの出発点になるかもしれません。
小さなカンファレンスですが、多くの優秀な研究者たちが集まります。雰囲気はとても和やかで温かく、きっと楽しめることをお約束します。

Andrew Story:

これまでに分析したサンプルで一番興味深かったのは何ですか?

Petr Vozka:

そうですね…
正直なところ日常的に扱っているサンプルはクールなものばかりですが、一番エキサイティングだった、または興味深かったサンプルを挙げるとすれば、博士課程の学生およびポスドクとして携わったジェット燃料サンプルの分析でしょうかね。アメリカ海軍の各軍事基地から送られてきたサンプルを分析しました。
これはとてもエキサイティングでした。
これは機密扱いになっていますので、さわりだけ説明させてください。
分析したのは原子炉の中に配置された複雑なサンプルでした。
目標としたのは、こうしたサンプルが核爆発に近づいた場合に、化学組成に変化があるかどうかを確認するために、その前後の化学組成を比較することでした。
それからカリフォルニアでは、海にあまり近くないチェコ共和国やほかのヨーロッパ諸国では起こらないことですが、数年前にハンティントンビーチで原油流出事故がありました。
リアルタイムでその場にいられたのはある意味すごいことで、事故発生後すぐにサンプルの採取を始めることができました。
海砂や湿地帯からサンプルを採取できました。
フィンガープリントサンプルもほぼ毎日分析しました。
そして来週は、ニューヨークのメトロポリタン美術館の方とお会いする予定です。そこで新たなコラボレーションを思いつくかもしれません。これもまたエキサイティングですね。

Andrew Story:

それはいいですね、素晴らしいです。
ほかにも私たちにシェアしていただけることはありますか?
ここまで色々といいお話を伺えました。

Petr Vozka:

ありますよ。これは本当の話なんですが、数分前に受け持ちの学生から連絡がありまして、2 つのシステムで起こったリークの問題を解決できたそうです。3 週間ずっと対応に追われていたんです。
手短に説明しますと、リークの原因はさほど超高純度ではないヘリウムタンクでした。
ラボには 2 つのシステムがありまして、1 つは GC TOFMS、もう 1 つはGCxGC TOFMSで、両方が 1 つのヘリウムラインに繋がっていました。
それで、まずはその部分から対応を始めました。
タンクを替え、シリンダーも替えましたが解決しませんでした。
それで、次の対策としてステムを排気し、トランスファーラインを外してシステムを落ち着かせるようチューニングを施してみたのですが、どれもうまくいきませんでした。
そこから 3 週間が経過して、もう一度ヘリウムタンクとシリンダーを交換してみようということになり、そこでやっと大元の原因を突き止めることができたんです。
トラブルシューティングは避けて通れないものであること、トラブルシューティングは分析化学者であるための重要な一部であることを認識させられました。
また、ラボの学生たちは過去 3 週間自分たちのサンプルを分析できない状態でした。彼らにしてみれば、それが出来なければ研究の意味がない、と思いがちですよね?
サンプルに関する理解を深め、結果を出し、結論をまとめる必要があるわけです。
こうしたことが出来なかったわけですが、それでも彼らはそこから多くを学んだと思います。
ここでお伝えしたいのは、もしお聞きの皆さんが学生だったり、職員になってまだ日が浅かったりすると、装置のトラブルが起きて解決しなければいけない時は自分のサンプルの分析ができず、憂鬱になるかもしれません。でもそう思わないでください。自分が思っている以上に、そこからたくさんのことを学べるかもしれないからです。

Dave Russ:

そのとおりですね。

Andrew Story:

わたしが博士課程だったころはほとんどそんな感じだったと思います。

Petr Vozka:

そうですよね。自分は何も出来ていないと感じるんですが、そんなことはないんですよね。
そこから学ぶことは多いです。

Andrew Story:

ええ、そのとおりですね。

Dave Russ:

Petr さん、今日の話のなかで話題になりましたが、受け持ちの学生たちが次のステップを探しているということでしたよね?
次のステップという観点から、彼らが次のステップとして何を求めているのか、このコミュニティがどんな形で彼らの助けになれるか、少し話していただけませんか?

Petr Vozka:

はい、もちろんです。
来学期には何人かの学生が卒業しますので、リスナーの中で彼らの受け入れに興味をお持ちの方がいましたら、今回が良い機会になるかなと思います。
少なくとも分かっているのは、学部生 1 人と修士学生 1 人が PhD プログラムを考えています。それから、大学院生の Genesis は PI たちとすでに話をしています。たいていの場合、彼らは私の受け持つ学生たちが装置のメンテナンスやトラブルシューティングができることに感銘を受けますよ。
とても大事なことだと思います。
それから、LECO 社とうちのラボとのコラボレーションについて全然話していませんでしたが、このキャンパスに LECO 複合化学組成分析ラボを立ち上げましたね。研究とトレーニングのための施設です。
このコラボレーションではトレーニングが大きな部分を占めていて、GCGC 分野の将来のエキスパートを育成することに主眼が置かれています。
私が受け持つ学生たちも、業界で働くことを望んでいます。
私のもとには、トラブルシューティングに長けた、賢く聡明な学生たちがたくさんいます。
例えば、Hung という名前の学生ですが、彼はスプリットバルブのケーブルが破損しているのを発見してくれました。
何回かテストを繰り返して、見つけ出してくれたんです。皆で修理しました。
業界でのポジションに関心をもつ学生たちもいますし、分析装置を製造する企業でのポジションに関心がある学生たちもいます。彼らのために多くの機会があると良いなと思います。将来彼らが活躍している様子について聞けたら、きっと誇らしい気持ちになると思います。

Andrew Story:

では、本日お聞きの方で、こうしたタイプの学生たちのなかで採用してみたいと思われる学生がいましたら、遠慮なく Petr さんにご連絡いただければと思います。喜んで連絡の手配をしてくださると思います。
それでは、皆さんから特に付け加えることがなければ、このあたりで終わりにしましょうか。
本日のポッドキャストで話題になった LECO 社の装置に関心をお持ちの方は、leco.com で詳細をご確認いただけます。
Vozka 助教授のウェブサイトへのリンク、2024 年 1 月に Vozka 助教授のラボで開催される Multi-dimensional Chromatography Workshop についての情報は、ショーノートに掲載しておきます。今回の Measured Science のエピソードにもご参加下さり、ありがとうございました。
またのご参加をお待ちしております。ぜひ新たなトピックや化学分析を発見してください。
ありがとうございました。